船舶が水上でバランスを崩さず、安全に航行し続けるために不可欠な要素が「復原性」です。

この復原性を科学的に証明するために行われるのが重量重心査定試験(復原性試験)です。

本記事では、試験の具体的な内容と、実務において試験を省略できる条件について解説します。

重量重心査定試験の目的と実施内容

船が完成した際や大規模な改造を行った際、その船が設計通りの安定性を備えているかを確認するため、実際の「重量」と「重心位置」を計測します。

  • 傾斜試験(重心査定)
    船上で既知の重りを左右に移動させ、その際に生じるわずかな傾斜角を計測します。このデータから、船の安定性の要となる「重心の高さ(KG)」を算出します。
  • 動揺試験
    船を意図的に横揺れさせ、その周期(戻ってくるまでの時間)を測ることで、復原性の良否を補助的に判定します。
  • 喫水計測
    船体の前後(または複数箇所)で水面下の深さを計測し、試験時の正確な排水量(船の重さ)と縦方向の重心位置(LCG)を割り出します。

これらの試験は、燃料や荷物、乗組員などが載っていない、船体そのものの重さを測る「軽荷状態」で行うのが原則です。

試験の「省略」に関する規定と基準

原則としてすべての船舶は実測試験を行う必要がありますが、一定の条件を満たし、計算によって安全性が十分に証明できる場合には、試験の一部または全部を省略することが認められています。

省略が検討される主なケース

  1. 同型船(姉妹船)の建造
    既に試験を実施した船と全く同一の設計・仕様で建造される場合。
  2. 軽微な変更・改造
    過去の試験データがある船において、装置の換装などによる重量変化が極めて小さい場合。
  3. 小型船舶の特例
    船の長さ(24m未満など)や用途により、簡易的な確認で済む場合があります。

省略の判断基準(許容誤差)

一般的に、過去の確定データと比較して以下の範囲内に収まっていることが、省略検討の目安となります。

排水量の差2%以内
重心位置(LCG)の差船の長さ(Lpp)の1%以内

実務上の留意点

復原性試験の実施、あるいは省略の判断には、専門的な知識と関係機関との調整が不可欠です。

船の種類や航行区域によって適用される法規が異なるため、計画の段階で管轄の検査機関(運輸局、NK、JCIなど)へ事前に相談し、試験項目や省略の可否について承認を得ることが、円滑な船級取得・検査合格への鍵となります。

船舶の安全の根幹を成すデータだからこそ、ルールに基づいた正確な計測と適切な手続きが求められます。

船の設計・検査の
無料相談はこちら

0465-43-8139
受付時間 平日9:00-18:00